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【シティライフインタビュー】 朝井まかて さん

2014年03月18日


小説家
朝井まかて さん

【シティライフインタビュー】 朝井まかて さん


2008年に小説家デビューして以来、数々の時代小説を世に送り出す朝井まかてさん。樋口一葉の歌の師として知られる明治の歌人中島歌子の激動の人生を描いた『恋歌』が今年、第150回直木賞を見事受賞!歴史小説として、そして恋愛小説として読む人に深い感動を与える物への想いや今後の執筆活動についてお話を伺った。


ただ歴史を追うだけではなく
読む人の胸を躍らせる物語を



”恋愛小説であり
女たちの再生を描いた物語

――幕末から明治を生きた中島歌子。『恋歌』を書こうと思われたきっかけは?

そもそも私は、複雑で血なまぐさいイメージの幕末が苦手で…。ある雑誌の企画で「幕末の志士について書く」という時も、好きだった樋口一葉の歌の師匠である中島歌子を選び、短い文章を書きました。ですから、この短文を目に留め本格的な執筆を勧めてくださった編集担当さんの提案にも、最初は「無理です」とお断りしていたんです。中島歌子は水戸藩士・林忠左衛門以徳(もちのり)と結婚し、「天狗党の乱」に巻き込まれ壮絶な運命を辿ります。彼女を語るには投獄されるシーンを書かざるを得ない。それで腰が引けていたというのもありました。その後も編集担当さんが何年も粘ってくださり、意を決して水戸を訪れたんです。実際にその地を踏み空気を感じることで歌子が生きた情景が浮かびましたね。何より私は人の運ってあると思います。案内してくださった人たちとの巡り逢いに背中を押され「書こう!」と。『恋歌』は歴史小説ですが、ただ史実を書くのではなく私にとっては恋愛小説であり、女たちの再生の物語。彼女たちが力強く生きることで失われた生を継いでいくことができるし、そういう積み重ねの上に私たちは今ここにいるのだという想いを感じますね。女性の方にこそ読んでいただきたい物語です。

背中を押してくれた
忘れられない人との出会い

―小説家を目指したのはいつ頃から?

物心付いた時から本が大好きで、小学生の時には「小説家になりたい」と口走っていたようですね(笑)。初めて物語を書いたのは小学2年生の国語の授業。次の授業が始まっても書き止められない私に、担任の先生が「ずっと書いてていいよ」と。そうして書き上げた物語を学級文庫にしてくださったんです。子どもって周りが褒めたり喜んでくれると嬉しいもので、この体験は自分の中でとても大きいですね。大学卒業後はコピーライターの仕事に就き、書く欲求は満たされていたものの、ずっともやもやしたものがあって…45歳を過ぎて先を考えるようになった時に、このままでは「小説を書けなかった人生」になってしまうと一念発起して大阪文学学校の門を叩きました。実は10年学校に通って一作も 書けなかったら諦めるつもりだったんです。そんな私を奮い立たせてくれたのが、「物書きの端くれのくせに、何腰引けてるの!」という先生の一言。思えば大事な場面で、いつも背中を押してくる人がいた気がします。本当に人の運ですよね。

史実と向き合うことで
ますます広がる物語の世界

―甲南女子大学では国文学を学ばれたそうですが、当時の思い出は?

高校時代からなぜか国語と古文だけは出来たので、やっぱり好きだったんですよね。大学時代の思い出は、阪急岡本駅の近くにとても素敵なティーサロンがあって、仲間と集まってはおしゃべりしたり、いつも笑い転げていました。芦屋川の桜とか三宮のオリエンタルホテルとか…思い出の場所もたくさんあります。大学では平安末期を専攻しましたが西鶴や近松の授業も面白くて。興味の赴くままに買い集めた本は今も手元にあり、自分自身の土壌になっています。私はどちらかというと軽ろみのある明るいものを好んで書いてきましたが、『恋歌』で厳然とした史実に取り組んでみて、歴史上の人物を自分なりの解釈で描く道も広がったように思いますね。本当に嫌な奴、悪い奴を徹底して突き放して見るというのも、書き手としては挑戦したいところ。現在いくつかの短編を執筆中ですが、これからも読者の胸を躍らせる物語をお届けしていきたいですね。

第150回直木賞受賞「恋歌(れんか)」
【シティライフインタビュー】 朝井まかて さん
定価:本体1,600円(税別) 講談社
幕末の江戸で熱烈な恋を成就させ、天狗党の一士に嫁いで水戸へ下った中島歌子。だが、尊王攘夷の急先鋒である天狗党は暴走する。内乱の激化にともない、歌子は夫から引き離され、囚われの身となった。樋口一葉の歌の師匠として知られ、明治の世に歌塾「萩の舎」を主宰し一世を風靡した歌子は、何を想い、胸に秘めていたのか。落涙の結末!

【Profile】
【シティライフインタビュー】 朝井まかて さん
●あさい・まかて 1959年大阪府羽曳野市生まれ。甲南女子大学文学部国文学科卒業。広告制作会社でコピーライターとして勤務した後に独立。2006年より大阪文学学校で学ぶ。
2008年、同校の課題作としてライフワークである園芸を素材に執筆した時代小説『実さえ花さえ』(講談社文庫で『花競べ向嶋なずな屋繁盛記』と改題)で第3回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞し小説家デビュー。
2013年、『恋歌』で本屋が選ぶ時代小説大賞2013、同作で2014年、直木賞を受賞。他に、『ちゃんちゃら』『すかたん』『先生のお庭番』など。
 

〈取材を終えて〉------------------------------------------------------------------ 
柔らかな語り口調と明るい笑顔でお話しくださった朝井先生。「恋愛小説として書いた」という主人公・歌子の一途な恋心が胸を締め付ける『恋歌』は、歴史小説が苦手な方にも、ぜひお勧めしたい一冊です!

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Posted by 北摂・阪神の情報紙シティライフ at 00:00 │シティライフインタビュー
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